暗い、暗い、暗い
周りにあるのはただの闇だけだ・・・・・
貪欲で、冷たくて、人を惑わすだけの闇
あぁ・・・でも
あの人の黒い髪も、瞳も、何処か温かさがあって
とても居心地が良かった気がする
一緒に居て穏やかじゃなかったけど、いつも楽しい日常で・・・・
あれ・・・・でも
『あの人』って誰だっけ・・・・・・?
「おや?気が付きましたか?」
一番最初に見たのは、今にも崩れてきそうな天井
そして何処かで知っているような、知っていないような声
その声のした方へ首だけを動かせば、その人物を発見
俺の寝ているベットに腰掛けていた
「・・・・アンタ、誰だ?」
「クフフ、何を寝ぼけたことを・・・
主人を忘れるほど馬鹿な、部下を持った覚えはありませんよ」
赤と青の正反対の色をした瞳が俺に向けられる
とても不思議な色合いで・・・引き付けられる様な錯覚
「ぇ・・・・あ、あぁ・・・そう、だった」
白くぼんやりとしている頭を動かそうとすれば
徐々に記憶が蘇って来た
確か目の前の人は俺の主人で・・・・俺より一つ上の先輩で強くて何故か戦うのが得意で
俺はこの人と偶然出会って、それから一緒に行動をすることにした筈だ
そう決めたのは俺はこの人が『好き』だから
まだこの好きっていうことの意味はよく分からないけれど
目の前の人と過ごした日常が頭の中に浮かび上がってきた
そう・・・・そして名前は
「すみません。多分疲れてたんです、骸さん」
「いいですよ、僕との仲でしょう?」
ゆっくりと寝ていた身体を起き上がらせれば
骸さんは笑って許してくれた
その様子に俺は心底、ホッとして肩の力を抜いた
また頭を殴られるのは勘弁だからな・・・・・・・・?
「あれ・・・・?」
「どうかしましたか?」
「ぁ、い、いえ。何でもないです」
変だな。
今まで骸さんに殴られたことなんてない筈なのに、何で『また』って思ったんだ?
自問自答しても答えなんか出てこないケド
取り合えず目の前で待っている骸さんの後にと歩いていく
「、今日は貴方にも戦ってもらわなければなりません」
「ぇ!?」
「僕がサポートするので安心して下さい。貴方が戦闘に不向きなのは知っていますよ」
「・・・一応頑張らせてもらいます」
「クフフフフ」
まぁ、骸さんが言うのは拒否できないので精一杯頑張るつもりだけど・・・
正直言って、戦うのはやりたくないし。
だけど俺はこの人の前で戦った覚えは・・・・・・・・
「」
「はい?」
下にを見ていた顔を上げた瞬間、唇に湿った感触
え・・・・・・うぇぇええっぇぇええ!?!?
すっっっっごい間近にオッドアイ
ちょっとマテ。むしろ僕に時間を下さいぃぃいいぃい!!!!
何故、俺と骸さんはキ、キ、キスをしているんでしょうかね?
「・・・・・・・・ッ」
それもこの人、唇舐めてきやがりましたよ!!
ちょ、マジ勘弁・・・・・・・・
口の隙間から舌を入れられる前に、骸さんの肩を掴んで引き離した
「・・・如何したんですか。いつもやっていることでしょう?」
「そ、そう・・・でしたっけ?」
それにしてはこの気持ちの悪さは何なんだ・・・・・
口を拭いたいけど、目の前にこの人が居たんじゃそんな事できない
俺は襲ってくる嫌悪感に必死に耐えていた
「まだ何もやっていないんですね・・・・彼は」
「え?」
「いえ、それでは行きましょうか。時間だ」
そう言って今度はしっかりと骸さんは歩いていった
俺はそっと袖で口元を拭う
未だに少し頭を白い霧が覆っているような感覚があるんだけど
何か引っかかりを感じる
思い出そうとすれば・・・・あの妖しくて残酷なほど綺麗なオッドアイが浮かんでくる
あぁ・・・・・・・
俺 ハ 一 体 誰 ダ ?
手渡された槍を構えて、目の前の奴を捕らえる
相手が手にしているのは・・・何処かで見たようなトンファー
気のせいかもしれないけれど
さっきから頭痛が酷いんだ。・・・・・・・・目の前の奴を見てから
朦朧とし始めた頭を無理やり動かして、前に出た
ヒュンッと切っ先が空を切る
かわされるなんて計算済み、キュっと足を捻って後ろに跳んだ身体の中心に蹴りを叩き込む
「・・・・・・・ッ」
硬い感触に邪魔される・・・トンファーで止められたらしい
足をすぐさま下ろして次の体勢に
その瞬間にも、相手は接近してきて
槍の柄とトンファーがぶつかる鈍い音
「・・・・いつまで其処に居るつもりだい?」
「はぁ?」
ギリギリっとどちらも譲らずにいるため至近距離
意味分かんないことを言われて、思わずアホな一言がでちまったじゃねぇか
そろそろ腕も痺れてきたので・・・・・・・
自由な足で、相手の足を払ってみる
・・・・・・・・・・・が
「・・・・・・・!?!??!」
トンファーを回されて、武器を吹っ飛ばされた
一瞬の浮遊感と
地面に身体が叩きつけられる感触と激痛
背中を強打して息を詰まらせていれば、強い瞳と目が合ってしまった
嗚呼、死ぬんだな
ぼんやりした頭、動かすのが面倒な身体、全てを他人事のように考える
アレ・・・・、俺ってこんなに潔い人間だったっけ?
「・・・・・・・」
「ぇ・・・・」
何で俺の名前知ってんだ?
ツキンッと、頭の痛みが増して眉間に皺を寄せる
「僕は」
ゆっくりと動いていく口を凝視する
ツキン、ツキン、ツキン、ツキン――――
痛い、痛い、痛い、痛い!!!
体中の血管が逆流をしたような衝撃が身体を犯す
あまりの痛さに眼も開けていられない
だけど、だけど――――――――
「君に、『守れ』って云っただろう?」
「・・・・・・ッ」
言葉と共に、奴の手が俺の左耳へと伸ばされる
冷たい指先が・・・・・ソッと固形物が貫通している場所を撫でた
そうだ、これはこの人に付けられた痕だ
「あ゛ぁぁあ゛ああぁ゛ぁぁ゛ああ゛ぁあッッッ!!!!!」
頭の中で、何かが、割れた音が、した
襲ってくるさっきの非にもならない頭痛と吐き気
視界が赤にも黒にも白にもなって、いっそ直ぐに意識を飛ばしてしまいたかった
視界が赤なのは、本当に眼から血が出ていたからだとは思わなかったけど
「ッッ!!!!」
うわぁ、この人のこんな顔始めて見たなー・・・
何処か冷静な頭がそんな感想を生んだりして
そしてあろう事か自殺行為を決行
絶対に限界であろう身体を無理やり動かす、骨という骨が軋んだ音を立てたけど
しゃがみ込んでいる目の前の人の腕をとって
「すみま、せんでし、た。・・・・雲雀、さん」
瞳を見開いた雲雀さんを見届けてから
押し寄せてくる闇に意識を手放した
・・・・・・・・その闇は、とても優しくて俺が好きな『K』だった