人間は自分と違う生物を目の前にして取る行動というのはどういうものだろうか?
人によったりして、まちまちだろうと思うが
まず思うのは恐怖といっても過言ではないだろう
だが、ソレは一般論としてあるわけで
誰一人として、同じ事を思うことはないのである
「・・・・で?」
「・・・で?って、普通怖がったり驚いたりするんじゃないの?」
苦しそうにフゥ、フゥと息を吐き出しているのにもかかわらず、ツッコミを入れてきたよ
まぁ、俺も変わっているなという自覚は無かったが今の状況だと
確実に変わり者だろう
嘘・・・と言う確立は低いが非現実的な話をさせられてこの反応は間違っていたのかもしれない
まぁ、変えるつもりはないんだけれど
「そんなこと言ってもな・・・俺は別に猿飛が怖いわけでもないし?
ってかそれがどうして俺を避けまくっている理由とどう繋がるのかそっちの方が気になる」
そう言うと、瞳を少し見開いて力なく笑った
ズリズリと辛いのか分からないが、壁伝いに座り込むと「変な奴」とまた笑った
失礼な
よっこらせ、と俺もしゃがみ猿飛の目線に合わせる
「っで?何で避けるんだ?俺を」
「・・・・・・」
「おい」
「あー・・・うん、こう言っちゃ悪いんだけどさぁ」
歯切れが悪そうに猿飛が口を開く
「・・・・アンタ、物凄く美味しそうな匂いがするんだよねぇ」
「・・・は?」
何なんだソレは。と視線で訴えると俺ではなく何処か違うところを見ながら
説明を話し出した
「人間の中には陰と陽があるんだけれど・・・まぁこれが所謂生命エネルギーで
普通はどっちか片方が多かったり少なかったりするものなんだけど・・・
たまに、ごく稀に陰と陽がまったく同じ量を持っている人間が居るんだよね」
「あ〜・・・まてよ、もしかしてソレが俺って?」
「うん」
「・・・・・それがどう美味しそうなんだよ」
「バランスの良い人間の血は美味しそうな匂いで分かるんだよ」
「ちょっとまて、もしかして今まで俺が避けられていた理由って」
「・・・・ちょっと、近くに寄られると不味いなーって、主に俺様が」
今も大分自分を押さえつけてるんだけどね?と苦しそうな笑みを向けられた
今まで露骨に避けられていた理由は
俺が嫌いでも、何かしたわけでもなくて
・・・・・俺を襲わないように?
やっと解けた謎は、俺に危害を加えないようにしてくれたコイツの気遣いだった
自分を押さえつけるというのは、理性で本能を殺していることなのだろう
現に今だって、無理に笑っているが
額には汗がうっすらと浮き出ているし、呼吸は苦しそうなものから直っていない
なんだよ、吸血鬼ってもっと冷血なものとかじゃないのか?
血はお前達にとっては食事と一緒じゃないのか?
どうやら俺は『吸血鬼』という事実よりも『猿飛佐助』という人物の方に情を持ってしまったらしい
露骨に避ければ良い印象派もたれないというのに
目の前にご馳走があっても、俺のことを考えてくれた
政宗の友人の、猿飛に
「いいぜ」
「え?」
「いいぜ、喰っても」
そう思うと、俺の中で覚悟みたいなものが形を成した
Yシャツの第二、第三ボタンまでを外して、首を見せるように襟元を大きく寛げる
その様をじっと見つめてくる猿飛
吐き出す息のリズムがまた速くなったみたいだった
「ほら」
「で、でもっそんな・・・」
「良いって言ってるんだよ本人が、何?やっぱり俺は喰えない?」
「嫌・・・そうじゃないけどっ」
「お前になら・・・良いよ別に」
ちゃんと人間の心をもっている、お前になら少し痛くても我慢してやろう
「ほら・・・」
「・・・ぁ」
座っている猿飛の腕を掴んで、自分のほうに引き寄せた
腕の中に引き寄せれると、俺より幾分か小柄な猿飛は抱き込まれるようになり
当然、顔は丁度首筋の辺りにあたる
ビクッと大きく身体を揺らす猿飛
「喰えよ・・・・・・つッ」
そういった瞬間
首筋に激痛が走った
ブツリと肉に硬質な何かが刺さる感覚
そして次に襲ったのは、熱さ
「ッ・・・・はっ」
猿飛の両腕は、まるで俺を掻き抱くようにして首に回っている
熱い、熱い、熱い
あぁ・・・吸われているんだなぁなんて頭の片隅でそんなことを思った
しかも、可笑しなことにさっきから熱さに混じって・・・・妙な感覚まで湧き上がっている
まるで・・・快楽のような妙な快感
・・・違う意味で息上がってきちゃったよーお兄さん
調子に乗って、猿飛の腰に手を回してみる
うっわ!ちょ、この子腰ほっそ!
どうしよう、俺は変態なのでしょうか
「・・・ん・・・・ふ」
「・・・・はッ・・・は」
コクリ、コクリと咽喉を鳴らす感じが肌を伝って分かる
血が無くなっていくのだから当たり前なのだが、倦怠感が襲ってきた
大きく息を吐き出していると、柔らかいモノがソコを這う感覚がしたと思うと猿飛が口を離す
「・・・満足しましたかー?猿飛君」
「うん、ご馳走様」
血は付いていないはずなのに、真っ赤に染まる唇を弧に歪めながら笑みを浮かべて
先ほどとは違う、恍惚とした表情に心臓が鳴ったのは気のせいだと思い過ごした